これまでずっと小出裕章先生を描き続けてきた画家 イコマレイコさんが、小出先生のメッセージと新しい描き下ろし画を掲載してくれました。
レイコさん、本当にありがとうございます!
事実として汚染はあるのです。私はどんなに辛い事実でも見ないよりは視た方がいいと思います。..... 小出 裕章
Koide Blue / 「みんなのデータサイト」へのメッセージフクシマ事故から7年半がたちました。熔け落ちてしまった炉心が今どこにどのような状態であるかも分りません。国と東京電力はそれを30年から40年かけて掴み出し、容器に封入することが事故の収束だと言ってきました。容器に封入したところで、放射能がなくなるわけではありませんので、それが事故収束であるはずがありません。でも、30年から40年で容器に封入できるというようなことも決してありません。すでに国と東京電力は当初の「ロードマップ」を書き換えざるを得なくなっていますし、実際には100年たっても掴み出すことはできないでしょう。
一方敷地外に放出された放射能の汚染も深刻です。私は3年半前まで京都大学原子炉実験所で働いていました。放射線管理区域内の作業もしばしばでした。放射線管理区域とは私のように、その仕事をすることで給料を得る大人、「放射線業務従事者」だけが立ち入りを許される場ですが、そこに立ち入ったとたんに、水を飲むことも食べ物を食べることも禁じられます。もちろん寝ることもできません。管理区域内にはトイレもありませんので、排泄もできません。つまり管理区域とは人が生活をしてはいけない場です。しかし、フクシマ事故では東北地方、関東地方の広大な地域が放射線管理区域に指定しなければいけない基準以上に汚れました。それを知った国は「原子力緊急事態宣言」を発令し、自分の作った法令を反故にし、子どもを含めた人々をその汚染地に棄ててしまいました。汚染の主要成分はセシウム137です。セシウム137の半減期は30年で、100年たっても10分の1にしか減りません。10分の1に汚染が減ったとしてもなお管理区域の基準以上の汚れが残る地域は広大に残ります。原子力緊急事態宣言は事故後7年半たった今も解除できていませんし、この日本という国は100年たっても原子力緊急事態宣言を解除できないのです。今生きている誰一人としてフクシマ事故の収束を見ることができません。
一方、この事故に最大の責任があるはずの政府は、フクシマ事故を忘れさせようとしています。一度は避難させた住民にも帰還の指示を出し、汚染がなくなったかのように装っています。帰還を余儀なくされた人々は、毎日恐怖を抱えながらは生きられませんので、汚染を忘れたいと願います。でも、事実として汚染はあるのです。私はどんなに辛い事実でも見ないよりは視た方がいいと思います。そのためには、汚染の事実を調べ続け、公表する努力が必要です。ありがたいことに、フクシマ事故後多くの人たちが自らの手で汚染を調査してくれるようになりました。その人々の中には、私が驚くほどの専門知識と力量を持った人もいます。そして、何よりもありがたいことは、その人たちが手をつなぎ合って「みんなのデータサイト」を作ってくれたことです。そこに蓄積されてきたデータはすでに膨大なものになっていますし、今回は、それを書籍にして発刊して下さるとのことです。心からお礼を申し上げます。
小出 裕章
「みんなのデータサイト」クラウドファンディング
https://motion-gallery.net/projects/minnanods
描き イコマ レイコ